「イーコマースフェア 2020 東京」セミナーレポート:ファンが自然と集まるECサイトBEAMSの動画・画像コンテンツ活用術~EC担当者が知りたい10の質問~

「イーコマースフェア 東京 2020」が、今年も1月28日・29日に東京ビッグサイトで開催された。EC・通販事業に関する先進製品・サービスが集結する展示会だが、あわせて、業界のキーパーソンによるトレンド解説、ソリューションの導入事例解説といったセミナーも複数開催される。28日には、「ファンが自然と集まるECサイトBEAMSの動画・画像コンテンツ活用術~EC担当者が知りたい10の質問~」と題して、BEAMSのコンテンツマーケティング戦略が紹介された。

BEAMS(ビームス)公式サイト
https://www.beams.co.jp/

登壇者

BEAMS事業企画本部 コミュニティデザイン部 部長矢嶋正明氏

CRI・ミドルウェア インターネット事業部 部長兼CRIWAREエヴァンジェリスト幅朝徳氏

ウェブテクノロジ セールス・コミュニケーション部三上夏代氏

BEAMSでは、スタッフ主導で作成した動画・画像コンテンツを、既存のSNSに頼らず自社サイトで発信している。
そのコンテンツは、ファンを増やし続けるとともに、売上にも大きく寄与しているという。そのような魅力あるコンテンツを充実させるためには、「忙しい店舗スタッフが、コンテンツを自発的に、つい投稿したくなるような仕組みづくり」をいかに構築するかが課題になっていた。」

セミナーではBEAMS矢嶋氏が、ECやコンテンツマーケティングに対する自社の戦略、現在の状況を紹介。あわせてCRI・ミドルウェア幅氏とウェブテクノロジ三上氏が、動画ソリューション「LiveAct PRO」、画像軽量化ソリューション「SmartJPEG」など、BEAMSが今回の施策を実現するために導入した技術やソリューションについて質問し、導入の狙い、その効果に迫った。

「フォトログ」「スタイリング」「ブログ」「ビデオ」という4つの投稿ジャンル

「スタッフ投稿コンテンツ(特に動画投稿)は、コミュニケーションツール。インターネットが私たちの持つ“資産=スタッフ自身”を拡張し、24時間365日の接客を可能としてくれた」(矢嶋氏)

BEAMSは1976年創業。国内160店舗・海外10店舗を展開するファッションショップの老舗だ。「現在の従業員数は約2,000名。小売業の基本として、お客様と会話を重ねて商品をお買い物いただくという考えが根本にある」とのことだが、EC方面では、2009年に自社ECサイトを立ち上げ。2016年から直営に切り替え、そのときに“メディアコマースサイト”としての方向性を明確にし、「スタッフが情報発信するスタイル」を採り入れた。

現在は「フォトログ」「スタイリング」「ブログ」「ビデオ」という4つの投稿ジャンルで、公式サイトを運用している。

フォトログ

1枚の写真から簡単に投稿可能。アクセサリーといったアイテムを中心に紹介。

スタイリング

全身のコーディネートを紹介。ファッションECサイトで主流のスタイルと言える。

ブログ

商品に限らず、スタッフの視点でおもしろいと感じたトピックを紹介。

ビデオ

スタッフの個性や人柄がより伝わるように、撮影から投稿までスタッフが自ら行う

矢嶋氏:
まずフォトログですが、小物や雑貨など、商品単体の訴求がメインです。弊社は洋服に限らず、さまざまな雑貨も取り扱っているので、そういった商品をお客様に紹介するのに適しています。

スタイリングは、全身のコーディネートを紹介するコンテンツです。着こなしをお伝えするために縦長画像を採用しています。

ブログは、読み物として“起承転結”を作れますので、スタッフが言いたいことを伝えやすいと思います。そのため表現に広がりがあり、スタッフごとのファンも付きやすくなっています。

そしてビデオ(動画投稿)は、店頭そのままにスタッフが登場し喋っていますので、臨場感があると思います。本人の個性や人柄が伝わるので、EC売上のためというより、 どちらかというとスタッフ自身を知っていただき、つながりを強くしてもらうためのコンテンツです。

スタッフの“ファッション愛” “ファッション熱”を顧客に24時間伝えることが可能に

矢嶋氏:
コンテンツのスキームとしては、サイトを閲覧したお客様が、投稿コンテンツに関連付けされた商品詳細ページに遷移し、サイトで購入したり店舗に来店するなど様々に変化します。これらの売上・PV・いいね数といった情報は蓄積され、全スタッフが見られるように可視化しています。

店舗の接客だと、スタッフのがんばりが徒労に終わったように見えることもありますが、オンライン上であれば、個々の投稿コンテンツから購入につながったことが、本人も他スタッフも本部もわかります。実際、これらの投稿で年間1億円以上の経由収益をあげている社員もいます。

このスキームでは、EC売上も大事ですが、「ご来店につながっていること」をもっとも重視しています。現在、定期的に社内勉強会を行い、投稿に長けたスタッフに登壇してもらっています。その中の話では、初対面のお客様なのに直接スタッフ宛にご来店してくれるという話がよく出ていまして、社内でも効果を実感しています。そして、コンテンツ起因のデータは、定期的に取りまとめ、社内に共有しています。それを基にスタッフの表彰制度を作ったり、評価にも反映しています。

三上氏:
見る人も投稿する人も、コンテンツを楽しんでいる様子が伝わりました。愛情をもってコンテンツを投稿し、それが結果として購入や来店につながるというコンテンツ施策ですね。

スタイリング・コーディネイト(BEAMSサイト内)
https://www.beams.co.jp/styling/

質問コーナー:とにかく「スタッフの投稿しやすさ」最優先、スムーズなUI/UXを実現

セミナー後半は、 “ECサイト担当者がBEAMS矢嶋氏に聞きたい疑問”からいくつかをピックアップし、三上氏・幅氏がぶつけていくQ&Aのスタイルで進んだ。

――『視聴者のPC/スマホの比率、レスポンシブデザイン上で配慮した点は?』

矢嶋氏:
PCとスマホの比率でいうと、スマホはすでに8割を超えている状況ですね。弊社のサイトは、2016年に現在の形にフルリニューアルしたんですが、デザインの制作自体は2015年から始めていました。そのときからすでに“スマホファースト”でデザインしていて、それをPC版に当てはめるという考え方でした。

――『御社は“EC化率20%実現”と聞きましたが、リッチコンテンツはどのように貢献した?』

矢嶋氏:
たしかに弊社はEC化率(EC売上が全体売上に占める割合)20%を超えていますが、自社サイトだけでなくZOZOTOWN(2005年立ち上げ)や、Amazon、楽天などすべて合わせたEC売上です。ただ、自社サイトが最大の販売チャネルです。

そのうえで“リッチコンテンツ≒作り込んだムービー”ということであれば、直接的に売上には大きく貢献していないと思っています。ファッション系企業だと、ブランディングのムービーを作ることも多いと思いますが、弊社では、そういったムービーはあまり売上には直結しません。それより、スタッフが投稿していくカジュアルなショート動画のほうが、パフォーマンスが高い。弊社では、スタッフに1人1台スマホを配っていて、スタッフ自身が簡易に編集して気軽に動画を投稿できるようにしています。

三上氏:
いわゆるリッチコンテンツではなく、UGCに近いものになっているのですね。

――『投稿コンテンツのガイドラインを設けていたりしますか?』

矢嶋氏:
ガイドラインについては、コンプライアンス面での制約と、技術面での制約があると思います。コンプライアンス面では、炎上回避など、“スタッフを守るため”という考えでガイドラインを設けています。技術面では、画像の縦横比やサイズ、動画の秒数など、コンテンツ制作上のガイドラインを設けています。

幅氏:
BEAMSさんの場合、それほどガッチリとレギュレーションが決められていなくて、かなりスタッフに委ねている部分があるように感じました。そのへんはいかがですか?

矢嶋氏:
まずは、スタッフが安全に楽しんで投稿できるようにしたいと思っています。そのうえで最低限のルールは設けておく、という感じですね。

幅氏:
「動画を投稿すると、最後に自動でBEAMSロゴが挿入される」というカスタマイズを、御社のLiveAct PROでは行いましたが、それもガイドラインの一環でしょうか?

矢嶋氏:
それもありますが、動画を再生したときに「これで動画が終わりましたよ」というクロージングを明確にしたかった、という意図があります。フェードアウトだったりブツッと終わったりするよりは、キチンと企業ロゴを出して終わる形式にしたかった。これを個々のスタッフに守らせるのは難しいので、LiveAct PRO側で自動的に挿入されるように対応していただきました。

――『大量の画像投稿で、サイトが重くなる心配はないのですか?』

矢嶋氏:
弊社の公式サイトは、EC統合型サイトですので、商品ごとの画像がそもそも多い。もともと非常に重くなるタイプなのに、2000名のスタッフが自由にコンテンツ投稿できるというスタイルなので、ものすごいデータ量になっています。

どうやって軽量化するか常に悩んでいたわけですが、SmartJPEGとLiveAct PROを導入したことで効果が出ています。スタッフが頑張って画像や動画を作り込んでいるのだから、そのクオリティは活かしてあげたい。でもデータの圧縮までスタッフが行うのは大変。そのへんを悩まなくて済むのが、SmartJPEGやLiveAct PROの大きな利点ですね。画質と容量のバランス調整については、私も入ってかなり意見を出させていただきました。

幅氏:
基本的にSmartJPEGとLiveAct PROによって、投稿者側にも本部側にも作業が一切発生しない仕組みを実現しています。スタッフのみなさんは特別な操作を覚える必要もなく、自然なスマホの使い方で投稿を行えるのが大きな利点だと思います。さらにもう1つ、画像や動画のデータサイズが削減されることで、サイト閲覧が軽快になりユーザビリティが上がります。

矢嶋氏:
そうですね、どちらも非常に重要な要素だと思います。コンテンツが充実するように、今回の施策では、とにかく「スタッフの投稿のしやすさ」を最優先に考えました。CMSの操作のしやすさだったり、データの確認のしやすさだったり、スムーズなUI設計だったり、もちろん圧縮によるUX向上も。そういう部分はすべて気を配ってきたと思っています。

――『スマホブラウザ上での大量動画のタイムライン再生にこだわった理由は?』

矢嶋氏:
弊社の動画ですが、再生ボタンをタップする必要はなく、ブラウザで表示されるとその瞬間に自動再生されます。スマホでスクロール操作をするだけで、次々と新しい動画が連続して再生されていきます。気になる動画があったらタップしてそのまま再生してもらえばいいし、次が気になったら、スワイプするだけで次の動画が再生されます。

一般的な動画だとサムネイル画像があるだけなので、クリック/タップをするまで、どんな内容が再生されるかわからないですよね。そのストレスをなくし、ブラウザでシームレスに自動再生できるのは、LiveAct PROの大きな利点ですね。

幅氏:
これまでの手法では、そもそも複数の動画の再生が不可能であったり、複数動画が同時に再生されると急激に遅くなったりしてしまいます。LiveAct PROではそうした課題をすべて解決しました。

矢嶋氏:
はい、弊社サイトへの実装でも頑張っていただきました。「こういうUI/UXだったらお客様は楽しいかな?」とイメージして、かなり無理難題をご相談していた。それでも門前払いされずに「難しいけど、挑戦してみましょうか!」という姿勢で対応いただき感謝しています。

幅氏:
弊社ではカンタンに「できない」という単語を発するのを禁止して(笑)プロジェクトに臨んでいます。BEAMS様のこだわりのおかげで、これまでに観たことのないようなオウンドメディアを実現することができました。TwitterやTikTokのように、アプリではなくスマホブラウザ上で大量の動画がどんどん再生されるという企業サイトは、世界でBEAMSだけじゃないかと思います。

――『月間200本以上もの動画が投稿される“土壌”や“しくみ”を教えてほしい!』

幅氏:
ビームスビデオがオープンしてようやく1年ですが、すでに動画数が2,500本を超えているんですよね。月平均200本以上の動画が投稿されているわけですが、ノルマとかあるんでしょうか?

矢嶋氏:
ノルマは一切ないです。マニュアルと投稿システムを用意したうえで、「できる人は、良かったら動画もあげてください」というスタンスです。そもそもの「投稿アカウント」の作成すら本人の意思に任せていますね。コンテンツの投稿は、あくまでスタッフ自身を活かすためのものです。こちらの本部としては、スタッフ同士、あるいは責任者がバックアップしたりサポートしたりできる体制をどう作るかということを考えています。

ビデオ(BEAMSサイト内)
https://www.beams.co.jp/video/

――『最後に、SmartJPEGとLiveAct PROを選んだ決め手を教えてください』

矢嶋氏:
一言で言えば「お客様に最適なUI、最高の体験を提供したいから」ですね。綺麗で軽い画像に変換できるSmartJPEGと、ブラウザで動画を自動再生できるLiveAct PROは、その実現のために必須の手段だと考えています。

幅氏・三上氏:
ありがとうございました。

取材日:2020年1月27日
記事公開日:2020年 4月 22日
所属組織、業務内容、写真、発表内容等は取材当時のものです。

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