「イーコマースフェア 2020 大阪」セミナーレポート:アーバンリサーチの『造って、創りつづけるECサイト』~リッチ&カジュアルで『買いたい』を盛り上げるコンテンツ活用~

西日本最大のEC・通販イベント「第10回 イーコマースフェア 大阪」が、9月15日・16日にマイドームおおさかで開催された。展示会にはECサイト構築、BtoB-EC、物流、オムニチャネル、決済、越境ECなどに役立つソリューションが集結。あわせて業界のキーパーソンによるセミナーも複数開催された。
16日には、アパレルメーカーのアーバンリサーチが、ウェブテクノロジとともに「アーバンリサーチの『造って、創りつづけるECサイト』~リッチ&カジュアルで『買いたい』を盛り上げるコンテンツ活用~」と題して講演を開催。多くのECサイト担当者が熱心に耳を傾けた。

アーバンリサーチ(公式企業サイト)
http://www.urban-research.co.jp/

アーバンリサーチ(公式オンラインストア)
https://www.urban-research.jp/

登壇者

アーバンリサーチ デジタル営業部 デザイン課 マネージャー尻江高昭氏

ウェブテクノロジ セールス・コミュニケーション部三上夏代氏

アーバンリサーチの公式オンラインサイトは、ECサイトとしての基本機能はもちろん、キャンペーンやショップ情報、スタッフによるスタイリングの投稿など、感度の高いコンテンツを多数展開している。日々刻々と進化するサイトのデザイン全般を統括しているのが、デジタル営業部デザイン課マネージャーの尻江高昭氏だ。

セミナーではアーバンリサーチ尻江氏が、同社サイトの現状のほか、メディアサイトやスタッフ投稿コンテンツを活用し“欲しい・買いたい”と顧客を後押しする仕組みを紹介した。あわせてウェブテクノロジ三上氏が、アーバンリサーチが導入した画像軽量化ソリューション「SmartJPEG」について解説を行った。

アーバンリサーチの「ECサイトを運営するうえで大切にしていること」とは

アーバンリサーチは、1974年にジーンズカジュアルショップとして創業。現在約280店舗(海外店含む)で、『URBAN RESEARCH』『URBAN RESEARCH DOORS』『KBF』をはじめとする複数ブランドを展開している。近年はECにも力を入れており、現在のEC化率は30%超。この数値はコロナ禍以前からの数字で、直近はさらに拡大している。

インターネット戦略においては、公式オンラインストアの「URBAN RESEARCH ONLINE STORE」、情報発信サイトの「URBAN RESEARCH MEDIA」、アウトレットを扱う「URBAN RESEARCH OUTLET」、スマートフォンアプリといった形で、複数のサービスを展開している。尻江氏はそのすべての立ち上げやクリエイティブに関わってきた。

一方、ウェブテクノロジは、画質はそのままに画像の容量を削減できるソリューション「SmartJPEG」をアーバンリサーチに提供しており、同社サービスのサイト軽量化に貢献しているという。

三上氏:
本日はよろしくお願いいたします。まず、御社のECサイトを運営するうえで、大事にされていることを教えてください。

尻江氏:
「お客様のニーズを常に意識すること」を大切にしています。
お客様の環境はデバイスも日々進化していますし、行動も日々変化しています。そうした進化・変化に合わせて、ユーザー目線でUIやコンテンツをアップデートしていくことを常に心掛けています。

三上氏:
現在のECサイトの「登録会員数や訪問者数」「顧客の年代と性別」「スマホとパソコンの比率」は、どういった状態でしょう?

尻江氏:
オンラインストアの登録会員数は300万人を超えています。年間の訪問者数は3千万人以上で、1日当たりにすると10万人前後のお客様が訪れています。

性年代では、20代後半~40代前半の女性が中心で、この層だけで約70%を占めています。デバイスの比率については、スマホが90%で、残りがパソコンとタブレットですね。やはりこの5年ほどで、スマホユーザーが急激に増えました。

三上氏:
次に、「サイトデザインの方向性」「売上アップした施策」「サイト流入のきっかけ」について教えてください。近年はレスポンシブデザインを採用したサイトが増えていますが、アーバンリサーチさんはいかがですか?

尻江氏:
結論から言えば、スマホユーザーの見やすさ・使いやすさを最優先しています。先ほどお話ししたとおり、当社ECサイトの訪問客は、スマホユーザーが90%を占めていますので、サイトデザインの方向性もそれを重視しています。レスポンシブデザインはあえて使っていなくて、スマホとPCそれぞれに最適化したデザインを設計し、ユーザー端末によって出し分けています。

三上氏:
低スぺックのスマホを使っているユーザーさんもいるので、専用デザインで表示することで、レスポンス向上は期待できそうですね。

尻江氏:
当社のスマホ画面のデザインを見てもらうと分かるんですが、ナビゲーションはすべて画面下部にまとめて配置しています。2018年秋にこのデザインにリニューアルしたんですが、当時はサイト上部にハンバーガーメニューを配置したデザインが主流だったんですよ。

一方で、スマホ自体のサイズが大きくなってきていて、要素を自由に配置できるようになりました。そこで“手の小さい女性でも、片手で操作できること”という条件を設定して、ナビゲーションを画面下部に配置しました。いまでは同種のデザインが増えていますが、当時は少数派で前例がなかったので、けっこう思い切った決断だったことを覚えています。

三上氏:
お客様が操作しやすい・買いやすい、アプリライクなUIを採用したということですね。これ以外にも、“ECサイトの売上がアップした施策”などがあれば教えてください。

尻江氏:
まずは2018年秋のデザインリニューアルです。これに合わせて導入した「店舗スタッフによるスタイリング投稿」コンテンツの反響も大きかったです(後ほど詳しく解説)。

三上氏:
サイト流入のきっかけで一番多いのは何でしょうか?

尻江氏:
「URBAN RESEARCH ONLINE STORE」の場合は、2006年から運営しているという背景がありますので、直接の流入や自然検索(オーガニック検索)での流入が過半数を占めています。一方ここ最近は、SNS経由の流入、メディアサイト(情報発信サイト)からの流入が急増しています。

入口を大きく広げて自然流入させるメディア活用術とは

三上氏:
SNS経由の流入、メディアサイトからの流入が多いと言うことは、コンテンツが有効に活用されているということでしょうか?

尻江氏:
具体的に説明しますので、まずはサイトの画面を見てもらいましょう。現在、当社のトップページのヘッダーは、ECサイト(URBAN RESEARCH ONLINE STORE)とメディアサイト(URBAN RESEARCH MEDIA)で二分割されていて、切り替えて表示できる仕様になっています。

ECサイトの特集ページは、リニューアル以降ずっと看板コンテンツになっていて、火曜と金曜の週2回更新、月に60本~80本のコンテンツを、専属スタッフがほぼ100%内製しています。

これが特集ページの中身になります。ぜひ実際に直接サイトを見ていただければと思います。当初はブランドごとの企画が多かったんですが、ここ最近はブランド横断の企画が増えていますね。このコンテンツ(リモートで秋のオシャレ談義)も、ブランドにとらわれず、人気スタッフによる座談会風の特集になっています。

新型コロナウイルスの影響で、リアル店舗が休業になったりお客様もお店に行きづらいという状況だったりしたので、各地のスタッフをリモートでつないで、お勧めのアパレルやアクセサリーを提案してもらいました。非常に反響が大きかったですね。

各地の人気スタッフが緊急対談!「リモートで、秋のオシャレ談義」各地の人気スタッフが緊急対談!「リモートで、秋のオシャレ談義」

尻江氏:
こちらはスタッフスタイリング投稿のページです。当社が公開していた公式スマホアプリは、もともと「UR STYLE」という名称で、スタッフによるスタイリング提案のアプリでした。その後、EC化率が上昇していくなかで、お客様から「自分の体型に近いスタッフの着こなしを見たい」という要望が増えてきたので、“ECの商品ページと密にリンクするコンテンツ”として再設計しました。身長別、あるいはブランド別でスタイリングを見る、といったことが可能になっています。

スタイリングの詳細ページでは、投稿に紐付けた商品の購入が、実際に上昇しました。現在ではスタイリング投稿経由の売上が、どんどん増加している状態です。スタッフについては、フォロー数をもとにしたスタッフのランキングも公開していて、これ自体も人気コンテンツになりつつあります。

三上氏:
現在のスタッフ数は約1,500人とうかがったんですが、ランキング上位だとスタッフさんに何か良いことがあるんでしょうか?

尻江氏:
定期的に、スタイリングページの売上やPVを集計しているんですが、それをもとに社内表彰などを行っています。これはスタッフのモチベーションアップにもつながっています。

三上氏:
店舗に行かないと会えないスタッフに、EC上で会えるのは画期的ですね。それとブランドによらないで、身長などによったコーディネートも見られるので、すごく参考になります。

さまざまな角度から魅力を語る「URBAN RESEARCH MEDIA」

尻江氏:
もう1つ、情報発信メディアである「URBAN RESEARCH MEDIA」についても解説します。もともとは各ブランドが独自のサイトを持ち、各店舗が独自にブログを運用していたのですが、TwitterやInstagramの台頭を受けて、アクセスが減少してきていました。そこで、2019年10月に各所に散らばっていた情報を1個所にまとめる形で、「URBAN RESEARCH MEDIA」として再構築しました。

記事の方向性としては、“商品の魅力をテキスト中心の読み物ベースで表現する”ことを心掛けています。ECサイトに対して、お客様は買い物目的で訪れており、さほどテキストは読まれない。そこで、“ECサイトで伝えられないことをテキスト中心に表現する場所”として、メディアサイトである「URBAN RESEARCH MEDIA」を位置付けて活用しています。副産物として、自然検索による流入が増加していますね。

あと、ブランド独自のサイトで公開されていた「SEASON LOOK」を、「URBAN RESEARCH MEDIA」でまとめて公開しており、ブランドにこだわらず横断的に、季節のファッションを見られるようになっています。

三上氏:
「URBAN RESEARCH MEDIA」は、読み応えたっぷりでECサイトのコンテンツとは雰囲気が違い、リッチなイメージですね。ECとメディアサイトの“リッチ&カジュアル“なコンテンツで、憧れと共感の両方にアプローチしているのでしょうか。

尻江氏:
ECサイトの中での商品の「表現」は、あくまで“お買い物の補助”です。テキストも最小限にしています。一方でメディアサイトは、商品の“魅力”を打ち出すとともに、“スタッフが商品を語る場”として活用したり、商品とはまったく関係のないコラムや読み物も自由に提供していて、読んでいる人が純粋に楽しめるものを創っています。

三上氏:
ファッションだけでなく、色々な角度からの情報発信をすることによって、ファンを増やしたり、長い目でみて購入につながっているんですね。

尻江氏:
アーバンリサーチを知らない方に対しても認知していただくきっかけになることを、期待して運用しているというのはありますね。

三上氏:
ファン向けだけでなく、広く入口を用意してくるのが大きなポイントなんですね。そういった想いが形となり自然流入増につながっているということですね。

商品詳細ページで商品の魅力を最大限つたえるということ

三上氏:
商品詳細ページについて、設計思想などをお聞かせいただけますか? アーバンリサーチさんは、商品撮影も内部で行っているんですよね?

尻江氏:
そうですね。たとえば商品アイテムのディテール画像に関しては、撮影方法や角度など、サイト群全体で細かくレギュレーションを作って運用しています。誰がどう撮影しても差が出ないよう完全にマニュアル化しています。

ただし、ディテール画像と違って、モデルを使った撮影では、ブランドごとの雰囲気を重視しています。これは、同じパンツの商品詳細ページの画像ですが、ブランドの担当者や撮影カメラマンに表現を一任しており、違いが出ていると思います。

三上氏:
1つ1つの商品について、画像のバリエーションが豊富ですし、情報量も画質もすごいですね。

尻江氏:
ECサイトなので、画像が占める割合が非常に高くなっています。ですから、画像のクオリティとファイル容量に関してはすごくこだわっています。写真については、10名以上の専属カメラマンが撮影とレタッチを行っていますが、ファイル容量については、SmartJPEGの自動化・最適化にお任せしています。“質の良いたくさんの情報を軽やかにつたえる”というのが、1つの姿勢ですね。サイト表示が軽くなること・速くなることは訪問者にとって大事なので、そこは気を遣っています。

三上氏:
SmartJPEGでは、人の目で見て分からない範囲で、ブランドイメージを崩さず、かつファイル容量をほぼ半減するということで貢献しています。

尻江氏:
大変助かっていますね。

これからも「作って、造って、創り続けるECサイト」でありたい。

三上氏:
今後の施策として考えていることを、可能な範囲で教えていただけますか?

尻江氏:
直近でやろうとしていることは、「サイト内検索の精度向上」と「検索関連のUIの改修」ですね。コンテンツのクオリティアップはいつも考えています。クリエイティブに関するA/Bテストを行いながら、研究を重ねています。その他も改善したい場所はいろいろあるので、日々手を止めずにアップデートを重ねていきたいですね。

三上氏:
メディアサイトとECサイトのつながり強化については考えていますか?

尻江氏:
そうですね、実は少しずつ動いていますが、大規模なことになりそうなのでもう少し先になりそうです。コンテンツ同士で行き来できるよう、商品ページとメディア記事との導線を強化したいなと考えています。

三上氏:
アーバンリサーチさんのサイトは、15年の歴史がある一方で、作ったままにせず「造って、創り続けるECサイト」をコンセプトに常に進化しているとのことですので、今後も楽しみにしています。SmartJPEGが、UI/UX向上、さらには転送容量やサーバ負荷削減に役立てば幸いです。本日はありがとうございました。

取材日:2020年9月16日
記事公開日:2020年12月22日
所属組織、業務内容、写真、発表内容等は取材当時のものです。

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