「高品質、かつ軽く」という、“画像最適化の原点”にたどり着いた

株式会社ACCESS
https://www.access-company.com/

ACCESS(アクセス)は、通信ネットワークの基幹ソフト開発会社として事業をスタート。携帯電話やゲーム機器で作動する HTML ブラウザ「NetFront」を提供してきましたが、2011 年に電子出版プラットフォーム「ACCESS Digital Publishing Ecosystem」(現PUBLUS)の提供を開始。さらに IoT 関連の開発も手掛け、現在はネットワーク事業・電子出版事業・IoT 事業などを柱として展開しています。

電子出版事業で提供している「PUBLUS」は、電子書籍やウェブマガジンの単品販売・セット販売・レンタル・定期購読などに幅広く対応する統合ソリューションです。電子出版ビジネスに必要な機能を網羅しており、多数の国内大手出版社が採用しています。

写真:ACCESS 電子出版事業部 開発部2課課長 日向彰治氏、開発部開発課主任 新宮澄夫氏
株式会社ACCESS 電子出版事業部 開発部
2課課長 日向 彰治 氏(写真左)
開発課主任 新宮 澄夫 氏(写真右)

「少年ジャンプ+」を中心に、さまざまな電子出版ストア・アプリを提供

――本日はよろしくお願いします。まずは御社についてお聞かせください。

日向氏:
もともと当社は、組み込み機器向けのブラウザからスタートしましたが、現在は複数領域の事業に取り組んでいます。

たとえば、エアコンやカーナビなどの機器をネットワーク化する IoT 事業の領域、ブラウザから発展してウェブプラットフォームの領域、小型カメラなどのハードウェア製品の領域、そして電子出版プラットフォームの領域ですね。

――電子出版プラットフォームとのことですが、これは御社が直接、電子出版サービスを提供しているということでしょうか?

日向氏:
いえ、私たちはあくまでプラットフォーマーとして、出版社などにサービス基盤を提供しています。それが電子書籍ストアソリューション「PUBLUS」です。

「PUBLUS」は現在、講談社様、小学館様、DMM.com 様、NHK 出版様など多数企業に採用いただいています。開発部の中は担当会社様ごとに4つの課に分かれていて、私が属する開発部 2 課は、集英社様を担当しています。

――集英社には複数の電子書籍サービスがあるかと思いますが、そのうちどれを担当されているのでしょう?

日向氏:
「週刊少年ジャンプ」本誌をベースにした「少年ジャンプ+」をメインに担当しています。

運営は別会社ですが、私どもは、アプリとウェブサイトについて、コンテンツ配信・管理・販売などのシステム部分を提供しています。同じように「ジャンプ BOOK ストア!」、「マーガレット BOOK ストア!」のシステムも当社のものです。

「ONE PIECE」「NARUTO」「花より男子」「ジョジョの奇妙な冒険」など、人気作品の個別アプリも手掛けています。こちらは現在7つほどが稼働しています。これもうちの部署が開発しています。

集英社様は、開発者が一般参加できるアプリコンテストを行っていて、“新しいコミックの見せ方”をつねに摸索していますね。そこから生まれたアプリですが、街中で漫画を拾って読める「マワシヨミ ジャンプ」というアプリも、当社が共同開発しています。

集英社さんのアプリもサービスも、「漫画を読んでもらう」という点では、我々のPUBLUSという配信プラットフォームを使っています。「マワシヨミ ジャンプ」もPUBLUSを使っています。

ACCESS 電子出版事業部 開発部2課課長の日向彰治氏

「高品質、かつ軽く」という、“画像最適化の原点”にたどりついた

――複数サービスがあるうえに、本誌の掲載作品、過去作品、場合によってはネットオリジナル作品など、かなりの作品数が公開されていて、しかも日単位・週単位・月単位でコンテンツが増えていくという……。コミック系の電子書籍サービスは、とにかくデータ量が大変そうですね。それが「SmartJPEG」の導入につながったということでしょうか?

日向氏:
当社では PUBLUS のパフォーマンスについて、2018 年にかなりの改善を進めたんですが、“漫画を読んでもらう”という部分の肝であるビューアーの起動が、まだまだ満足の行くものではありませんでした。いろいろ試行錯誤したんですが、起動がどうしても遅い。ウェイト画面にアニメーションキャラクターを表示するといった UI も検討しましたが、やはり本質的な解決ではないと思っていました。

「とにかく起動を速くしよう」ということで、さまざまな測定や分析を行い、やはり「コンテンツのダウンロード速度」という部分に行き当たりました。漫画というのは「画像ファイルの集約」なのでサイズが大きい。だったら軽ければ軽いほど Better だ、というところに立ち返ったわけです。そのうえで「高品質、かつ軽く」という画像最適化ソリューションを探していたときに、集英社さんから「SmartJPEG」の提示をいただきました。そこから比較検討に入り、導入に至りました。

――導入後の反応は、実際どんな感じだったのでしょう?

日向氏:
「SmartJPEG」は、独自のロジックかつ高品質で、元の画像品質を保ったままサイズを低減できたことが選択のポイントになりました。当初はデフォルトの圧縮率で運用していたんですが、「ビューアーの起動速度が改善されるのなら、もっと強く圧縮をかけても問題ないのでは?」という話になり、現在は、かなりの高圧縮モードを使っています。

圧縮率については、さまざまなパラメータ設定の入稿データを集英社さんに確認してもらったんですが、けっこう強めのモードでも、サービスにおいて遜色ないことが確認されました。読者からの否定的な反応も皆無で、安定的な運用ができていますね。

漫画独自の設定も必要なし、微調整しなくても手間なく最適化

――漫画の画像圧縮だと、「カラー原稿は綺麗に見せたいな」「○○先生は、書き込みが細かいから、ディテールをしっかり見せたいな」とか、“作家性によって圧縮率を変える” “有料版・無料版で画質を変える”なんてことがあるかな?と思ったんですが、そのへんはいかがでしょう?

新宮氏:
コンテンツによっては、そのままの状態でサイズを半減できたものもありますね。

開発部開発課主任 新宮澄夫氏

――それはかなりの圧縮率ですね。読者にとっても嬉しいんじゃないでしょうか?

日向氏:
「格安SIMも普及していますし、通信容量を気にするユーザーは多くなっているという印象があります。画像サイズが圧縮されることは、事業者が「データ保存の容量、通信の容量を削減できる」と同時に、読者が「閲覧にかかる速度や通信容量を削減できる」というメリットが生まれますよね。モバイルユーザーはもちろん、PCユーザーにとっても、メリットは大きいと思います。

「SmartJPEG」の導入ですが、「少年ジャンプ+」がきっかけですけれども、PUBLUS 共通での適用になりますので、「ジャンプ BOOK ストア!」「マーガレット BOOK ストア!」、さらには個別アプリでも効力を発揮しています。現在すべてのコンテンツに対して、デフォルトで圧縮がオンになっています。

――導入後に、社内外から明確な反響などはありましたか?

日向氏:
「SmartJPEG」のみに限定できないのですが、2018 年にシステムパフォーマンス向上を進めて、改善に成功して、反応時間を 3 分の 1 以上に短縮できたんですよね。高速化のロジックもいろいろ試行錯誤して、それが 2018 年に結実した感じです。集英社さんにもかなり喜んでいただきました。PUBLUS 共通での改善なので、集英社さん以外の出版社さんも恩恵があったと思います。

もちろん漫画の場合、コミックでの 100 ページ以上の配信と、週刊 1 話の 10 ページ前後の配信と、容量での差が大きいので、ビューアーを使い分けていたりもします。一括ダウンロードか逐次ダウンロードかといった違いもある。そこでは、求められる“速さ”も、また違ったりしますよね? そういった部分については、いろんな視点から配慮しています。

「少年ジャンプ+」も、当初は週刊少年ジャンプの読者が、月曜日に最新作の配信を見に来ることが多かった。それが徐々に変化し、月曜以外の読者も増加している。特定のタイミングや作品でなく、「毎日の使いやすさ」が重要になってきていると感じます。

――今後「SmartJPEG」に追加してほしい機能などありますか?

新宮氏:
もっと圧縮率を優先する、とがったモードも欲しいですね(笑)。画質とファイルサイズの比較において、「画質に軸足を残さず、とにかくファイルサイズを優先したい」というケースが、現実にはあるように感じています。かなり極端ですが、こういった設定も、現場としては欲しいですね。「無料の漫画なら、もっと粗い画質でもいいから速くして欲しい」というニーズがあるのではないかと思っています。

日向氏:
いまの圧縮率で、十分綺麗に圧縮できているけどね(笑)。大手出版社のコミック部門が、基本性能で満足するぐらい、「SmartJPEG」は高い水準の機能を提供していると思います。出版社ごとに、かなりの部分で課題は異なると思いますが、当社が関わっているケースでは、かなりの部分で改善が進みました。

――本日はお忙しいところありがとうございました。

取材日:2019年8月20日
事例公開日:2019年10月17日
所属組織、業務内容、写真、インタビュー内容は取材当時のものです。