ボクは、食べ物に関しては好き嫌いがほとんどない子供だった。
だからといって子供が嫌うテッパンの食材であるニンジンやピーマンが好物だったわけではない。食卓に並べば残さず食べてはいたが、たいして美味しくないな、と思いながらもぐもぐやっていた。
特に子供のころ苦手だったのは酢の物だった。
きゅうりとワカメの酢の物は、しばしば食卓に並んだ。ムダに酸っぱい感じとワカメのヌルっとした食感がダメだった。もちろん、食べ残すことはなかったが、母親に進んでオーダーするようなことは絶対になかった。
同じように子供のころ苦手だったのは、ひじき(味も食感も中途半端)、ふき(繊維が気になってやな感じ)、こんにゃく(食べ物っぽくない食感がダメ)、高野豆腐(スポンジっぽい食感がイヤ)、そうめん(のどごしがキライ)、れんこん(しゃきしゃきした歯ごたえが食べ物らしくない。あと、味がない)、などなど・・・繰り返し言うが、だからと言って食べなかったわけではない。食感や味が嫌いだと思っても、空腹の方が勝ってしまい、しっかり食べていた。
それから40年近い年月が過ぎ、もう初老の域に入ったボクの味覚は大きく変わった。 続きを読む