ウェブテクノロジ代表の小高です。
CEDEC2014のセッションで発表したTipsのなかから、今回は一つのトピックをご紹介しようと思います(少し情報を追加しています)。
スマートデバイス(スマートフォンとタブレット)のアプリを開発する際、動作対象の機種・OSバージョンの決定に悩むことはありませんか?
なるべく新しい機種・OSのみ対応にすれば、
- 新しいOS・機種のみでサポートしている新機能が使える
- 新しい機種ほどCPU、GPU、メモリ容量がリッチになるので、パフォーマンスを要求する処理が可能
- 動作検証工数の低減が可能
などのメリットがあります。
とはいえ、まだ現役で数多く使われている機種・OSバージョンを対象外にしてしまうと、ユーザーを逃してしまうことにもなります。
Android、iOSとも、公式デベロッパーサイトでは以下の情報を公開していますが、もっと詳しい情報が欲しい場合はどうすれば良いでしょうか。
- Android: https://developer.android.com/about/dashboards/index.html?hl=ja
- OSバージョンのシェア情報、スクリーンサイズ、OpenGLバージョン
- アプリを公開している制作者であれば、そのアプリを登録しているカテゴリについてはもう少し詳しい統計情報(OSバージョン、端末、国、言語、自分のアプリのバージョン比率と推移、通信キャリア)が得られる
- iOS: https://developer.apple.com/support/appstore/
- OSバージョンのシェア情報
- アプリを公開している制作者であれば、購入者がiPhoneなのか、iPadなのかはわかる
Unity Hardware Statistics を活用しよう
そんなときに役立つのが、Unity Hardware Statistics です。3DゲームエンジンであるUnityが動作している環境の情報を集約したものなので、GoogleやAppleが公表している情報と比べるとユーザー層に偏りがあるはずですが、OSバージョンのシェア情報などの傾向はかなり一致しているので、ゲーム以外のジャンルのアプリ開発の際にも充分に参考にできるでしょう。
ただし、Unity Hardware Statisticsには弱点があって、情報の更新が遅いことです。本記事執筆時点(2014/10/6)で、2014/5の情報が掲載されています。Apple Developer Support によると、iOS 8のシェアが2014/9/21時点で46%となっていますが、Unity Hardware Statistics では当然のことながら影も形もありません。
※ Unity Hardware Statisticsの公開はすでに終了しています。
Mobile Hardware Stats (上のキャプチャ)からは、モバイル機器のOS種別・バージョン、GPUメーカー、CPUスレッド数、機器メーカー名、メモリ容量、ディスプレイのアスペクト比が表示されます。
画面右上の [All | Android | iOS | WP8 | WinRT ] のボタンを押すと、それぞれのプラットフォームに絞った情報が得られます。OSやGraphicsなどの項目毎に絞って、詳細情報を見ることもできます。
たとえば、Graphicsについての詳細情報では、GPUメーカー、OpenGLの世代、GPUのチップ種別が表示されます。
AndroidのGPU情報の詳細表示を見ると、Qualcomm(Adreno) 35.3%、ARM(Mali) 29.6% に続いて、Imagination Technologies(PowerVR) が 22.8% もあることがわかります。
AndroidのDisplayについての詳細情報には、解像度別シェアがあります。
800 x 480: 23.8%、1280 x 720: 18.2%、1920 x 1080: 12.7%、1024 x 600: 8.5%、1280 x 800: 8.2%、…、となっていますが、日本ではさすがに 800×480 の端末は少なくなってきているのではと思います。
Unity Hardware Statistics は全世界対象で統計が取られているので(GoogleやAppleが公表する情報も同じですが)、日本市場とは大きく傾向が違う部分もあることには注意が必要です。もっとも大きな違いと考えられるのは、iOSとAndroidのシェアでしょう。例えばこのような情報(この情報の信憑性は不明ですが、日本市場の実感とは合っています)も参考にすると良いでしょう。
また、http://ja.wikipedia.org/wiki/Android端末一覧 などを参考にして、日本市場における差分を推定することも必要になってきます。Wikipediaの内容に正確性の保証はありませんが、日本で発売されている端末の網羅性はかなり高いので、この目的に必要な信頼性は充分に備えていると考えられます。最新情報の反映が早いことも実用性を高めています。
Unity Hardware Statistics からは、メーカー別シェアや機種別シェアなど、ほかにも興味深い情報が多種得られます。実際にサイトにアクセスしてお確かめください。
余談ですが、Operating Systemについての詳細情報のなかには、なぜか国別情報が含まれています。China: 22.2%、United States: 14.0%、Brazil: 4.3%、Russian Federation: 4.3%、Japan: 4.1% という順です。日本よりブラジル・ロシアのほうが多いことに少し驚きました。