田中圭一のゲームっぽい日常 自説を曲げなかったら正しかった件

k1_201601

あれは1996年の秋だったと思う。

プレイステーション版「ときめきメモリアル」が大ヒットして、私の周囲でもハマっている人が数多くいた。ご多分に漏れずボクもハマって、ときメモ以外の恋愛シミュレーションにまで広く手を出すくらい夢中になった。当時はゲーム会社に勤務していたこともあって、ボクはこう思った。

「男がこれほど夢中になってしまう恋愛シミュレーション、女性向けを作れば大ヒットは間違いないはず。」

当時も今も女性たちは恋愛ドラマや恋愛マンガに夢中だった。そう、その企画は「インタラクションできるトレンディードラマ」だ。女性が夢中にならないはずはない。

しかし、そう力説するも、当時社内のゲームプランナーたちは口を揃えてこう言った。

「女性は男性とちがって、お金を払うなら、なにかの見返りがないとプレイしてくれない。その証拠に女性がゲームセンターで熱を上げているのはUFOキャッチャーかプリクラだけだ。」
「女性は現実的だからデジタルデータの男性に夢中にはならない。」
「アダルトアニメの例を見るまでもなく、架空の異性に夢中になれるのは男性だけだ。」

・・・とまぁ、けんもほろろにボクの意見は否定された。

でも、その時ボクはガリレオガリレイの「それでも地球は回っている」よろしく、心の中で「少女漫画に出てくる男性だって架空のキャラじゃないか。」と呟いた。

ボクの正しさが証明されるのは、それから数年後のこと。コーエーの「アンジェリーク」が一部の女性にヒットしはじめてからだ。今では女性向け恋愛シミュレーションはジャンルとして定着している。架空の異性との恋愛を楽しむことに性差はなかったのである。

 

さて、話は変わるが、マンガがスマホやPCで普通に読まれるようになってかれこれ5年くらいになるだろうか?

今マンガが直面しているのは「どうやってデジタルマンガでマネタイズするのか?」という問題である。紙の本は売れなくなり、代わってデジタルデータでテキストやマンガを読む時代に入りつつある。しかし、これは単に「読む装置が変わった」だけの話ではない。紙の単行本に比べるとデジタルデータは安価だったり、バーゲンされていたり、サイトによっては無料で読めたりする。つまり、このままデジタル化が進むに連れ、今までのようにマンガを単行本にしてヒットさせ印税で豪邸を建てるというジャパニーズドリームが崩れ去っていくことになりそうなのだ。多くの出版関係者もデジタルデータでは儲からないことを予測している。

だが、ボクはこう思っている。「ソーシャルゲームが課金ビジネスで大成功しているじゃないか。同じデジタルデータであるマンガだってやり方を工夫すれば無理な話ではないはずだ。つまり、ゲームなら「ああっ!・・・ここで体力回復の薬があれば、先のステージに進めるのに!無料でプレイしてきたけど、ええい!薬を買うぞ!」という心理にプレイヤーを誘導しているわけで、マンガだって同じ方法が取れるのではないかと思っている。

しかしながら、この意見も多くの出版関係者によって、けんもほろろに否定されてしまっている。「ゲームとマンガは本質的に違うコンテンツだ。インタラクションの概念がないマンガに、ゲームと同じ課金のノウハウは使えない。」という意見が圧倒的だ。

はたして本当だろうか?ボクは懐疑的だ。例えば『ガラスの仮面』や『DEATH NOTE』を途中で止められるだろうか?『デビルマン』をラスト1巻だけ残して読むのを止められる人がいるだろうか?つまり、無料で読み始めたマンガの「どこを課金ポイントにするか」で、マネタイズは十分可能なのではないかと思うのだ。

例えば全5巻の『デビルマン』は各巻を300円(計1,500円)で売るのではなく、1巻は無料、2巻は100円、3巻は200円、4巻は400円、5巻は1,000円とすれば、読者は納得して課金してくれるし、合計金額は1,700円になって、均等の値段で売るより200円も多い。こういった課金タイミングを工夫するだけでゲーム的なマネタイズは実現できると思っている。

とにかく、この答えは数年後に出るだろう。はたして「アンジェリーク」の時のように「そら見たことか!やはりボクの言ったとおりだったじゃないか!」と言える日がくるだろうか?みなさん、お楽しみに!

タグ: , |

コメント

6件のコメント

  • ろい
    2016年1月8日 17:33

    無料化では、ご指摘のやり方が「キングダム」で成功していますよね。
    WEBで10巻まで無料配信したところ、11巻からの売上が急増したとか。

    私は以前から「従量課金制」がどうかな?と思っています。
    無料でも、現状の「一冊いくらで所有:有料」でもなく、
    とにかく安価にして「1ページor1冊読んだらいくら」という課金制度にする。
    例えば一ページ5銭で一冊180p読めば9円とか。
    安価で細かな課金は面倒に思いますが、電話料金のように月額でまとめれば現実的です。

    現状の電子書籍は結局「データ」を売買するのではなく、「読む権利」を売買しています。
    だから会社が潰れれば読めなくなる危険があるわけですが、
    そもそも読む「行為」自体に課金すればそうした恐れもなくなります。
    安価になりますが、気に入ったマンガを何度も読めばその都度課金される訳です。
    その方がユーザとしての満足度は高いのではないでしょうか。

    技術的な困難はないと思いますので、どこかの事業者がこうしたアイデアを実現してくれれば、とずっと思っています。

  • 匿名
    2016年1月8日 20:28

    1巻無料の漫画の続編がどれだけ売れてるかのデータ出せば証拠になりそう

  • たき
    2016年1月8日 21:33

    中国嫁日記の作者さん、ギャル娘ちゃんの作者さんや、Web小説から本にしてお金を生み出してるSAOとか他のラノベの先生など、幾つかの例はありますが、まだまだ方法論は確立されてませんよね。田中先生の方式が正しいかどうか、注目しておきます♪

  • 匿名
    2016年1月9日 00:57

    無料でマンガを公開してるサイトの中には、すでにそういうサイトが出てきてますね
    1日に読めるマンガの本数が決まっていて、読める本数を増やしたいなら課金する感じの

  • 匿名
    2016年1月9日 17:01

    Jコミというモデルがすでにありますね

  • 2016年1月10日 10:21

    ● メリット

    企画・編集・印刷・流通・店舗(在庫保管)のコストダウン。

    ● デメリット

    コピーが拡散するという販売者の不利益か、もしくは何時か不意に読めなくなるという購入者の不利益。
    > デジタル著作権管理は人手を介さない
    > 発行部数定額で永代管理する第三者に委託するというビジネスモデルも可能性としてあり得るのでは?
    > 現行では例えばAmazonとかDMM.comとかドワンゴなどの流通業者が「片手間」として行っている
    > 株式の保管における証券保管振替機構のようなものがあればよい

    企画・編集といったノウハウの蓄積が働かない。
    > 例えばスタジオベントスタッフのような著名な職業編集プロダクションは機能する
    > 出版社が企画・編集のユニットに解体されていくだろうというシナリオも「ナナのリテラシー」で示唆

    発行者個人に著作権管理など諸々の責任。
    > これの対策は無いと思われる
    > 例えば手塚治虫のパロディを流通に載せようとしても、原著作者との折衝などの問題で個人ではムリ

コメントはこちら