田中圭一のゲームっぽい日常 俯瞰できない人

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もう30年来のつきあいになる友人がいる。Yさんという男性だ。ボクと同じ年なので今年で53歳になる。既婚者で子供が2人いて、営業職のサラリーマンを30年やっている平凡な男性なのだが、ただひとつ普通じゃない点がある。

このYさん、3年に1回くらいの割合で交通事故に遭っている。

16歳でバイク免許を取って以来、通算で9回もやってしまっている。特にバイクでの事故で何度も入院している。骨折した箇所はボクが知っているだけでも5カ所。本人はしきりに「本当に俺は運が悪い。ツキがない。」と言っている。

…しかし、ボクは知っているのだ。Yさんが交通事故に遭いやすいのには、ちゃんと理由がある。

まずYさんは、時速30㎞制限の道路で、確実に50㎞以上のスピードを出す。一旦停止の標識は無視するか、止まっても1秒以下だ。左右確認はしない。路地でも徐行はしない。Yさん曰く「一旦停止なんて、普通みんな守ってないよね?」

…つまり、そういうことだ。

ボクは何度も「徐行も一旦停止も交通事故を防ぐために決められたルールなんだし、普通は守るもんだよ。」と忠告したが、Yさんは「交通ルールを守る真面目な人もいるにはいるが、守らない人だってそれなりに多い。それが世の中だ。」と言って、ボクの話を聞かない。

彼の価値観からすると、車が通っていない交差点で赤信号を守っている歩行者は真面目なのではなく「バカ正直で合理性に欠ける人」のようだ。

そんなわけでYさんは、自身が交通事故に遭いやすいのは「不運」が理由であってそれ以外の原因を探ろうとはしない。そんなものだから9回も交通事故をやっていて、車もバイクも手放すつもりなどまったくない。

こういう人を知っているので、ボクは物事を俯瞰して見ることの重要性をいつも感じている。

15年前にタバコをやめたのも将来の肺がんリスクを下げたかったからだ。体重に気を使うのも、飲酒をやめたのも、病気のリスクを下げたいためだ。

今日の喫煙、今日の暴飲暴食は、20年後の健康を破壊する…そういう視点を持つことは極めて重要だと思うのだが、周囲の友人には「美味しい物を食べられない人生になんの価値がある?」と言う人もいるし、「喫煙者で肺がんにならなかった人は大勢いる。本当のところ因果関係なんてハッキリしていないし、禁煙するくらいなら肺がんで死んでも別に後悔はしない。」という人もいる。

価値観は人それぞれだと思うが、少なくともボクは、まったく対策を取らずに重病になったとしたら、間違いなく後悔する。そういうタイプだ。

タグ | 2020/06/16 更新 |