オフショア開発の要点とインド出張で感じたこと

ウェブテクノロジ代表の小高です。

先日、インドに出張してきました。オフショア開発を併用する取引先のプロジェクトに当社が参画することになり、その推進のため当社メンバーと一緒にオフショア先を訪問してきました。

Trivandrum Technopark

今回訪問したTrivandrum Technopark

ところで、オフショアと聞いて多くの方が頭に浮かぶことがありますよね。Googleで「インド オフショア」と入力すると…。「失敗」「問題点」というサジェストが現れるくらい、オフショアでのトラブルは良く耳にします。
インドに限らず、オフショア開発をスムーズに進めるためにはノウハウが必要で、阿吽の呼吸が通じる(こともある)日本の開発会社と同じように発注してもうまくいきません。

この記事では、前職でオフショア開発の経験を積んできたメンバーの知見とあわせ、今回の出張を通して感じたことをまとめてみました。

Technopark 訪問先ビルの屋上からの眺め

訪問先ビルの屋上からの眺め(Technoparkの一部)

プロジェクトの背景

今回、当社が開発に参画した半導体製造装置の制御ソフトウェア開発プロジェクトでは、当社エンジニアが開発を行うとともに、装置メーカーとオフショア企業との間のブリッジ業務も行っています。このプロジェクトのために、半導体メーカーでオフショア開発の経験を積んできたメンバーをスカウトし、ブリッジ担当として配置しました。

当社の役割は、装置メーカーの潜在ニーズをヒアリングしながら引き出し、整理した上で仕様に落としてソフトウェア開発を行うことです。ソフトウェア開発のうち、試行錯誤が必要な部分や、装置を前にした試験が必要な部分を当社の担当、仕様が明確な部分をオフショア先の担当という振り分けにしました。

インドオフショアの現状

インド以外にもオフショア開発を行っている新興国はいくつもありますが、そのなかでもインドは開発者の層が厚く(オフショア先のなかでは)歴史もあるため、経験を積んでいるメンバーが多いのが特長です。

今回、オフショア先からは日本の大手メーカーで同じ業種向けのプロジェクトに関わった経験のあるエンジニアが参加してくれました。 インドよりも単価が安い新興国はありますが、経験が浅い若手エンジニアばかりなので日本側の指導の手間が膨大にかかり、結局は安く済まないといったことも起こるようです。

特徴的なInfosys社社屋(今回の訪問先ではありません)

Technoparkにある特徴的なInfosys社社屋(今回の訪問先ではありません)

オフショア開発の要点

今回のインド出張の目的は、キックオフのためです。
オフショア開発のように文化的背景の違うメンバー同士でプロジェクトを進めていこうとする場合、顔合わせは大切な要素です。 そして、オフショア先と一緒にみっちり仕事するという泥臭い作業を通じて、信頼関係を醸成していくことが成功に繋がります。

オフショア先を下請けではなく、ともにプロジェクトを成功させるためのパートナーとして見ることも大切です(これは国内の外注先に対しても同じことだと思いますが…)。

実務面では、SoW(Statement of Work)を明確にすることが挙げられますが、これは多くのプロジェクト管理の書籍などで言及されていることなので、ここでは割愛します。

オフショアで失敗するのは、オフショア先に対し、阿吽が通じる国内外注先に丸投げするノリの延長で充分なコミュニケーションをとらないやり方です(相手先の選定を間違えて、必要とする能力がなかったという場合は除くとして)。

プロジェクトメンバー(一部)

プロジェクトメンバーと

今後の日本企業の立ち位置

今回、初めてインドのオフショア先を訪問して「日本ではそう遠くない将来、ソフトウェア産業も製造業のように海外移転が進む」であろうことを改めて肌身で感じました。

製造業が新興国に移転していったことと同じ現象が、日本のソフトウェア産業にも起こることは確実です。特に、日本のソフトウェア産業の大半を占める下請け型ソフトハウスには大きな打撃になります。

これからは、顧客に価値を提案できる会社でなければ、生き残りは難しくなっていくでしょう。 ウェブテクノロジは、設立当初から自社製品の開発を目指し、受託開発においても顧客のニーズを汲み取り、それを実現するよう努めてきました。

今後は、オフショアの力を最大限に引き出すブリッジ業務を含め、阿吽の呼吸が通じる日本のソフトウェア開発会社として、さらなる高みを目指していきたいと考えています。

余談

今回訪問したのは南インドのケララ州(ケーララ州)トリヴァンドラム(ティルバナンタプーラム)。想像していたインドとは随分と違う印象でした。

  • 言葉はヒンディー語ではなくマラヤーラム語。文字も日本人がインドの文字と認識しているデバナガリ文字とは違います。
  • ケララ州はインドの平均に比べ非常に識字率が高く、教育水準が高い地域です。大学も複数あり、テクノパークの隣には工科大学があります。

    University of Kelala

    University of Kelala (Technopark隣の工科大学とは別)

  • インドの女性蔑視から来る悲惨な事件についてのニュースを聞くことがありますが、ケララ州では歴史的に男女差別が少ないようです。実際、訪問先では女性社員をよく見かけました。ただ、インドの他地域のIT系企業でも女性比率は高いようです。
  • ケララというのはココナッツの国、という意味だそうで、南インド料理ではココナッツを良く使います。また、米や米を原料として発酵させた加工品もよく食べます。
ホテルのケララ風朝食

ホテルのケララ風朝食

ホテルの夕食

ホテルの夕食

ホテルの夕食

ホテルの夕食

  • 食事は美味しく、街も(良く聞くインドのイメージから比べると)綺麗で、仕事とは別に観光に来てみたいと思わせる場所でした。
タグ , | 2020/06/16 更新 |