田中圭一のゲームっぽい日常 マンガ家にとって「50歳」とはどういうことなのか

k1201410今年もあと残り3ヶ月を切ってしまった。ついこの間、年が明けたとばかり思ってたのに、だ。

さて、本題に入ろう。私は現在52歳。日本人男性の平均寿命が79歳なので、ざっくりと余命は27年もあるわけだ。…27年も?いや、27年しか残っていないワケだ。

特に、マンガ家という「精密な絵を描く仕事」「感性豊かな物語を作る仕事」「常に新しいトレンドを作り出す仕事」に従事する者としては、27年はちっとも長い時間ではない。

50代になり、目に見えて「仕事に対する集中力」が落ちてきたのを感じる。40代までは1時間でできた仕事が、50代になって2時間以上かかることがある。

70代で今なお現役のあの宮崎駿監督も、最新作「風立ちぬ」は完成までに7年かかっている。だが、宮崎さんの劇場作品第1作「ルパン三世・カリオストロの城」はたった3ヶ月で完成している。もちろん、予算や時間制限の問題があっての3ヶ月だから単純比較すべきではないが、その後の「風の谷のナウシカ」「天空の城ラピュタ」が2年で完成していることを考えても、加齢による集中力や画力の衰えは、誰も避けては通れないのだと思う。

さて、そうなると私に残された時間は、実時間に換算してどのくらいと見積もるべきなのだろうか?

おそらくペンを握って原稿を仕上げることができるのは70歳までだろう。そして、52歳~70歳までの18年間は、集中力の衰え、画力の衰えを考慮すると若い頃の10年分くらいに相当する、そう考えるのが妥当だ。

つまり私に残された時間は、あと10年。

私が1年間に仕上げることができる原稿は、現在のところ300ページだ。

ということで、答えは…300ページ×10年=3,000ページ

単行本が1冊200ページだと考えると、15冊分だ。

それも、毎年フルで原稿依頼があった場合のマックス値が15冊。たったの15冊。

ところが、私が描きたい作品は現在でも20作品以上ある。今後もアイデアが涌いてきたら、それはもっと増えていくはずだ。

つまるところ、残りの時間と描けるページ数の中で、描きたい作品の中から「どの作品を諦めるか?」を決めなきゃならない。そういう時期にきているのだ。

年を追う毎に時間の経過が早く感じられるようになっている。10年なんてあっという間に過ぎそうだ。

ちょっと焦る。

タグ | 2020/06/16 更新 |