田中圭一のゲームっぽい日常 巨大ヒーロー特撮番組 その大いなる謎

『ウルトラマン』は1966年に放映が始まった日本初の巨大ヒーロー特撮番組である。(※正確にはほぼ同時期に巨大ヒーロー特撮番組『マグマ大使』も放映を開始しているのだが、同着で日本初とする。)

現在に至るまで新作が作られ続けている日本の特撮番組の金字塔と言っていい作品だ。

さて、このウルトラマンの凄い点は、2016年の最新作『ウルトラマンオーブ』に至るまで、以下に列記する基本設定やストーリーフォーマットにほとんど違いが無い点だ。

  • 主人公は銀色を基調として昆虫の複眼のような巨大な目を持った身長40メートル近い巨人で、宇宙から地球の危機を救うためにやってきた。
  • 普段は人間(等身大)の姿で、正体を隠している。
  • この世界では、怪獣や宇宙人が一定のタイミング(毎週1回程度)で日本(主に関東圏)を襲う。
  • 怪獣退治の専門チーム(メンバーは6人~10人ほど)が組織されており、専用の兵器や武器が秘密基地に装備されている。
  • 主人公は、その組織の一員であるが、巨人(ウルトラマン)であるという事実は隠している。
  • 巨人(ウルトラマン)は、長時間その姿でいることはできない。3分程度の時間制限がある場合が多い。
  • 巨人(ウルトラマン)は、身体から光線を発射して敵(怪獣や宇宙人)を倒す。
  • 巨人(ウルトラマン)は、体力が不足してくると胸についているランプが赤く点滅して(音も鳴る)危険を周囲に伝える。
  • 主人公は怪獣や宇宙人が町を破壊しつつ暴れている時(つまり、怪獣退治の専門チームが撃退している時)、突然姿を隠して巨人(ウルトラマン)に変身するが、周囲の隊員たちは主人公の不自然な行動に疑問を持たないし、主人公が不在になることで全体の作戦行動に支障を来している様子はない。

列記した設定やフォーマットはウルトラマンシリーズのみならず、円谷プロ以外の会社が作った巨大ヒーロー特撮番組でも、ほぼ同じである。

これに対して多くの視聴者が「不自然だ」という声を上げないのも、ボクにとってものすごく気になる点だ。

考えてもみて欲しい。

  • 怪獣は同時多発的に出現してもおかしくないはず。それも2匹とか3匹じゃなく、100匹単位でも。ましてや宇宙人が地球侵略を目的として攻撃するのなら、核兵器のような大量破壊兵器で世界各地を同時に襲う方が、早く目標達成できるはずだ。
  • 6人程度の専門チームに対処させるより軍隊を大量投入してでイッキに殲滅した方が効率的じゃないのか?
  • 主人公が正体を隊員たちに明かした方が、作戦行動がスムーズにいくはずだ。巨人(ウルトラマン)を投入することを前提に作戦を組めば武器弾薬を節約できるからだ。また、巨人(ウルトラマン)と共同で武器開発すれば、さらに効率的なはずだ。
  • 巨人(ウルトラマン)は、わざわざ敵に赤いランプを点滅させて自身が弱っていることを知らせる必要はない。怪獣の知能次第だが、点滅を見たら逃げ回って巨人(ウルトラマン)が姿を消したあとで、ゆっくりと町を破壊すればいい。まして敵が宇宙人なら弱点を晒すことは命取りになる。なぜ、そんなことをする必要があるのか、理解に苦しむ。

もちろん、番組を作る上で、こういったフォーマットが便利であることはわかる。特撮オタクでもあり玩具メーカーで働いた経験もあるボクが知らないはずはない。

そうだとしても、もっと現実に沿ったリアルな設定で新作を作ってもいいのではないかと思うのだ。かつて、ロボットアニメが「なぜ巨大ロボットが軍ではなく研究所レベルで作れるんだ」とか「そんなに強いロボットなら、なぜ量産しないのか?」などの不自然な点を払拭して、傑作「機動戦士ガンダム」が生まれたように、巨大ヒーロー特撮もリアルな設定、納得のいくフォーマットでボクらが腰を抜かすようなすごい番組を作って欲しいと願っている。


【12月28日 10:50追記】

お詫びいたします

12月26日に公開しました「田中圭一のゲームっぽい日常:巨大ヒーロー特撮番組 そのおおいなる謎」におきまして、私の不正確な知識と情報および意見によって、読まれた方、とりわけ特撮番組ファンの方に不愉快な思いをさせてしまいましたことをお詫び申し上げます。

最近のウルトラマンシリーズにつきましては、新作が放映される度に何話かを視聴して「なるほど、今回はこういう設定なのか、こういうコンセプトなのか」というのを確認した程度で全体を通して視聴していなかったこと、それにもかかわらずシリーズを通して大きく変わっていないということを書いてしまい、誠に不勉強であり浅薄であったと反省しております。

製作されている方々の努力や工夫によって、従来のフォーマットに新解釈がなされていたり、従来にはない展開や設定で新作が作られていた事実があることを多くの方からご指摘いただきました。それを受けまして、最新作を含むシリーズ作品をあらためて詳細に視聴させていただきたいと思います。

本コラムに関しましては、記載内容を変更するか記載内容を削除するかを検討しましたが、削除は本投稿をなかったことにするかのような誤解を受ける可能性もあるため、今件の経緯を知っていただく上で、このお詫びの文章と合わせて残させていただければと思います。

2016年12月28日
田中圭一

 

タグ , | 2020/06/16 更新 |