田中圭一のゲームっぽい日常 夜の買い物依存症

田中圭一のゲームっぽい日常 夜の買い物依存症

「深夜のテンション」というものは本当に不思議だ。なにかに取り憑かれたかのような行動を人に起こさせる。典型例はラブレターだ。深夜のテンションで大好きな異性への想いを綴って、翌朝読み返してのたうち回った経験をした人は少なくないはずだ。

テレビの通販番組が深夜の遅い時間に放送されるのは、なにも安く放送できる時間帯だという理由だけではないだろう。番組を観た人は「深夜のテンション」で冷静さを失い衝動買いしてしまう、それを狙っている節もあると思う。

つい最近も、「油を使わなくても焦げ付かないフライパン」が紹介されていて、欲しくてたまらない気分になった。もしもテレビ番組がネットと連動していてポチっと押せば購入できるシステムなら、間違いなく買っていただろう。フライパンなんてめったに使わない上に、そもそも家に常備されていて買い換える必要なんてないのに、である。

ボクの場合、アニメや特撮のフィギュアを深夜にネットで検索して購入してしまい、届いてから後悔したことも多い。フィギュアの出来は問題ないのだが、そもそも飾っておく場所もないし、手にとって眺めていても30分で飽きてしまう。わかっているのについつい買ってしまう。つまりボクは深夜のテンションに魅入られて「購入する瞬間のエクスタシー」だけが欲しいのだ。

そこで、こんなビジネスを思いついた。

月額300円を支払えば、とある通販サイトにログインできて、そこでは夢のような商品を紹介する番組を観ることができる。購入ボタンを押すとすぐさま「ご購入ありがとうございました!」のメールが届く。…しかし、その商品が届くことは絶対になく、お金も請求されない。つまり「購入する瞬間のエクスタシー」だけが味わえるのだ。

では、なぜ月額300円の課金が必要なのかというと、集めたお金で魅力的な商品を紹介する動画を作るためだ。「好きな漫画の単行本を入れるだけで、アニメDVDが出来上がる映像化マシン」とか「空飛ぶオートバイ」とか「ペットと会話ができるボイスチェンジャー」とか「周囲10km圏内のすべての異性が求婚してくるフェロモン香水」などなど、番組は魅力的この上ないし、あなたは購買の瞬間だけを楽しめるのだ。
これこそ購買衝動だけを満たす夢のビジネスだと思うのだが、どうだろう?

タグ | 2020/06/16 更新 |