田中圭一のゲームっぽい日常 SNSが作り出すオンデマンド雑誌

k1_201504Facebookのタイムラインを追っていると興味深いニュースや面白い動画が次々と流れてくる。つい時間を忘れて読みふけってしまう。今のFacebookは、私にとってはヘタな雑誌より何倍も面白い。

それもそのはず、SNSでつながった私の友人たちは、趣味や属性が似通っているため、私のツボに刺さりやすい記事や映像がシェアされて、数多く集まるからだ。

これは紙の雑誌では絶対に不可能だ。雑誌に限らずマス媒体といわれるものは、より多くより広い人たちに届けるため、コンテンツはおのずと万人受けするものが集められる。消費者は、そういう「ごった煮の鍋の中」から自分の属性に合うコンテンツを探さなければならない。それは結構骨の折れる作業だ。

 

以前この連載でも書いたが、電車に乗って周囲を見渡すと多くの人がスマホを見ていて新聞雑誌を読んでいる人は少数派だ。本当に少ない。その原因は、このようなネットでしか実現しえない「オンデマンド雑誌」の仕組み、その魅力にもあると思う。

昨今出版社は紙の本が急激に売れなくなったため、確実に売れる企画やジャンル、固定ファンが数多くいる人気作家、過去にヒットした本のリニューアルや続編といったリスクの低い本でないと出しにくくなっているという。

そんな状況だからこそ「今までにない面白い本を!」「他社ではできない奇抜な企画を!」という声が業界内外から聞こえてくる。

しかし…
コンテンツ個別のクオリティを上げる以前に、もっと根本的な問題に立ち返るべきだと思う。

要するに、FacebookやLINEを上回るSNSを作る、またはネット使った「オンデマンド雑誌」の仕組みを作る、これこそが急務なのではないだろうか?

 

80年代前半に、玩具業界を黒船が襲った。
家庭用テレビゲーム機だ。

大手玩具メーカーは「あれは玩具とは別物。」と考え、本格参入に及び腰だった。結局、そのジャンルで天下を取ったのは、花札・トランプを製造販売していた弱小メーカーの任天堂だった。

天下を取られた大手玩具メーカーは、それでもプラスチックの玩具を柱と考え、プラットフォーム(家庭用テレビゲーム機)への参入を果たせなかった。結局、これに勝利したのは家電メーカーのソニーが手がけたプレイステーションであった。*

* その後1996年に、プレイステーションに遅れること2年、バンダイがピピンアットマークで果敢に挑戦したが、勝利できなかった。

今の出版社は、80年代の玩具メーカーに立ち位置が酷似しているように見える。
ぜひとも視点を変えて、この混沌とした状況から抜け出して欲しいと思っている。

タグ | 2020/06/16 更新 |